水素社会の必要性とは？
地球温暖化は、人類が直面する重大な課題の一つです。主な原因である温室効果ガスの排出を抑制するためには、エネルギーの脱炭素化を進める必要があります。
水素は、燃焼させても二酸化炭素を排出しないクリーンなエネルギーです。産業や生活など様々な分野で使える「水素社会」が実現すれば、エネルギーの脱炭素化が促進され、地球温暖化の防止につながると考えられています。
水素社会の実現には、3つのメリットが期待されています。
エネルギーの脱炭素化
水素は燃焼時に二酸化炭素を排出しないため、化石燃料の代替となる可能性があります。
エネルギーの安定供給
水素は再生可能エネルギーや化石燃料から生成され、大量貯蔵・長期保管が可能です。
産業の発展
水素は燃料電池や合成燃料などのエネルギー源として、多様な産業分野で活用できます。
EU容認やF1でも注目される「合成燃料」とは
合成燃料は水素と二酸化炭素を原料として製造される燃料であり、水素社会の実現に向けた重要な技術です。製造過程で回収した二酸化炭素は、燃焼時に再び排出されるため、カーボンニュートラル（二酸化炭素排出量ゼロ）を達成することができます。
合成燃料は、内燃機関やガソリンスタンドの既存設備を活用できます。電気自動車や燃料電池車と比べて、インフラや車両の変更が不要です。更に、航空機や船舶などの長距離輸送にも、カーボンニュートラルなエネルギーとして期待されています。
2022年3月、欧州連合（EU）は、合成燃料を再生可能エネルギーと認定しました。これは、合成燃料の普及を促進するための重要な一歩となりました。
また、F1では2026年から合成燃料100%の使用が義務付けられます。合成燃料の活用はモータースポーツの分野でも注目されており、走る実験室と呼ばれるF1が有効性や技術を検証することで他の産業への応用が可能になると見込まれています。
メタルシール（ガスケット）の役割と機能
合成燃料の製造には、水素と二酸化炭素を高圧で扱う工程が必要です。しかし水素は爆発性が高く、二酸化炭素は有毒なため、漏れが起きると重大な事故につながる可能性があります。そのため、製造装置の隙間や接合部をしっかりと密閉することが重要です。
そこで用いられるのが「メタルシール（ガスケット）」です。
これは金属製のリング状の部品で、合成燃料の製造プロセスでは、反応器や配管などの接合部にはめ込んで漏れを防ぎます。樹脂やゴム製のシール材と比べて、高温高圧の過酷な環境でも気密性を保ち、製造装置の安全性を高めています。
形状は様々ありますが、一般的なものではOリング型やCリング型があげられます。
合成燃料の製造装置におけるメタルシールの機能
- 水素と二酸化炭素の漏れを防ぐ
- 反応器内の圧力を保持する
- 反応器内の温度を制御する
エッチング加工のメタルシール（ガスケット）
メタルシールは、エッチング加工という技術を用いて製造することができます。
エッチング加工とは、薄板金属を薬品で腐食させて目的の形状を溶かし、削り取る加工方法です。この技術を使えば複雑な形状のメタルシールを製造することができます。バリもなく精密な加工が可能なため、シール性能も向上します。材料のロスも少なく、コストを削減することができます。
エッチング加工で製造されたメタルシールは、以下の分野・用途などで使用されています。
- 航空機や自動車などの高精度・高性能が求められる機械
- 医療機器や食品機械などの衛生性が求められる機械
- 化学プラントなどの高温・高圧の環境で使用される機械
エッチング加工のメリットまとめ
- 複雑な形状の製造が可能
- 精度の高い製造が可能
- バリがない
- 材料ロスが少ない
- コストが比較的安価
メルテックでは様々な厚みや形状のメタルシール（ガスケット）をエッチング加工で製造しています。
曲げ加工などにも対応しておりますので、是非一度ご相談ください。
エッチング加工以外の加工方法（プレス加工／切削加工／レーザー加工）と比較検討される場合は
こちらをご参照下さい。
まとめ
水素社会は、水素の生産や貯蔵と合成燃料の普及が不可欠です。これらのプロセスには、メタルシール（ガスケット）が重要な役割を果たしています。
メタルシールは、高温や高圧の環境下で、水素や二酸化炭素の漏洩を防ぐ役割を担っています。メタルシールの性能が向上すれば、合成燃料の製造コストを低減し、製造効率が向上すると考えられています。
今後の展望
水素社会の実現に向けて、合成燃料の研究開発や実証事業が進められています。製造コストの低減や製造効率の向上が進むことで、合成燃料の普及が加速することが期待されます。
また、メタルシール（ガスケット）の高性能化も進んでいます。耐圧性や耐熱性、耐摩耗性、耐振動性などの性能が向上することで、合成燃料の製造装置の安全性や信頼性の向上が期待されます。
水素社会は、地球温暖化の防止やエネルギーの安定供給など、さまざまなメリットをもたらすと考えられています。今後も水素社会の実現に向けて、さまざまな技術開発が進んでいくと期待されます。