概要
ステンレスの薄板材を使用して精密部品を製作する際には、切削加工やプレス加工、レーザー加工など様々な加工方法が用いられます。しかし、材質特性を理解しながら適切な加工方法を選ぶことは容易ではありません。
なぜなら、ステンレスは「錆びにくく」「強度が高い」という優れた特性を持つ一方で、難削材と呼ばれ、加工硬化性が大きい金属だからです。 また、ステンレス内部に熱が残りやすく、薄板材の加工の際には「バリ」や「反り」といった問題に悩まされることも多いのではないでしょうか。
そこで注目すべきは、薄板材でも高精度な金属加工が可能な「エッチング加工」です。この技術はエッチング液によって素材を溶解し規定の寸法に形成する加工方法で、精密写真と腐食加工の応用によって誕生しました。
ここではステンレスのエッチング加工について、素材の特徴や他の加工方法との違いなど、メリット・デメリットを踏まえながら詳しく解説します。
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ステンレスの特徴
ステンレスは炭素含有量が1.2%以下、クロム含有量が10.5%以上とされる鋼のことで、材料記号「SUS」で表記されます。ここではステンレスの特徴について詳しく解説します。
錆びにくい
ステンレスはその名のとおり、「錆び(stain)」が「発生しない(less)」という意味で、錆びにくいことが最大の特徴です。
これは、ステンレスに含まれるクロムが酸素と結びつくことで表面に酸化皮膜を形成し、錆びの発生を防いでいるためです。
耐熱性に優れている
ステンレスは熱伝導率が低いことから耐熱性や保温性に優れており、ポットや水筒などに使用されます。
一方で、放熱性には劣るためエンジンなど駆動部においては、一般的にステンレスではなくアルミニウムが用いられます。
強度が高い
ステンレスは炭素が含まれていることから、鉄と比較しても強度が高い素材です。
一方でその強度から非常に加工が難しく、難削材と呼ばれています。
衛生面やデザイン性に優れていてる
ステンレスは衛生面で非常に信頼性が高く、食器などの家庭用品から精密な医療機器にいたるまで多彩な場面で使用されています。
また、様々な表面処理に対応していることからデザイン性が高く、オブジェなど芸術品としての用途も広がりつつあります。
リサイクル可能
ステンレスは100%リサイクル可能な金属として知られ、錆びにくいことから時間が経っても劣化が少なく、高品質のまま回収・再利用が可能です。
SDGsをはじめ、環境に配慮した素材開発が求められる昨今、ステンレスに対する需要は今後も増えることが予想されます。
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ステンレスの種類
ステンレスは添加物の含有量や熱処理によっていくつかの種類に分類されます。ここでは代表的なステンレスを3つご紹介します。
マルテンサイト系 (SUS410・SUS420等)
マルテンサイト系は炭素含有量が0.1〜0.4%、クロム含有量が12〜18%で、ニッケルを含まないステンレス鋼です。
加工する際には柔らかく、製品として使用する際には硬いという性質で、ステンレスの中でも比較的加工しやすい素材です。強度はステンレスの中で最も高い反面、耐食性ではやや劣ります。
焼入れと呼ばれる熱処理によって硬度が高いマルテンサイト組織を形成するため、刃物やタービンブレードなど強度が求められる部品に使用されます。
オーステナイト系(SU304・SUS316等)
オーステナイト系は炭素含有量が0.15%以下、クロム含有量が16〜20%、ニッケル含有量が8%以上のステンレス鋼です。
クロムとニッケルを含んでいることから、耐食性と耐熱性の両方に優れていますが、焼入れができないため、硬度ではマルテンサイト系に劣ります。
ステンレスの中で最も生産量が多く、フォーク・スプーンなどの家庭用品から自動車部品にいたるまで様々な分野で使用されています。
フェライト系(SUS430等)
フェライト系はクロム含有量が18%程度で、ニッケルを含まないステンレス鋼です。耐食性が高く、焼入れ後も硬化が少ないことからプレス加工に適しています。
強度が必要な部品や、長期的に負荷がかかる機械部品には向いていませんが、安価で優れた耐食性を持つことから、自動車部品や建物の内装材に使用されています。また、磁性を持っているのも大きな特徴です。
ステンレスの加工方法
ここではステンレスの加工について、4つの方法とそれぞれの特徴をご紹介します。
ステンレスのエッチング加工
エッチング加工は、エッチング液を用いて素材を腐食・溶解させ、任意の形状を形成する加工方法で、「バリ」や「反り」が発生しないうえに、高精度での加工が可能です。
また、エッチング加工に必要な原版の製作は、プレス金型と比較すると安価で長期間使用できることから、試作〜中量生産におけるコスト面で非常にメリットがあります。
さらに、薄板材においても高精度な対応が可能であり、ステンレスにも適した加工方法といえます。
ステンレスの切削加工
切削加工とは、マシニングセンタなどの工作機械を使用し、素材を削ることで形成する加工方法のことで、旋削、フライス、穴あけなどいくつかの種類があります。1つの加工に時間を要するため、小ロット試作には向いていますが、量産には向いていません。
ステンレス材を切削する際は熱が逃げないため、工具摩耗や工具破損を引き起こすリスクがあります。
NC制御による高精度加工も可能ですが、素材や板厚によって難易度は大きく変化します。薄板材の加工においては、素材内に残った熱によって「反り」「ひずみ」が発生しやすくなります。
ステンレスのプレス加工
プレス加工とは、プレス機と金型を用いて素材を変形・せん断する加工方法です。金型が必要なためイニシャルコストがかかりますが量産性が非常に高く、数万〜数十万ロットにも対応することができます。
しかしステンレス材は曲げ荷重を加えると、変形後に元の形状に戻ろうとする「スプリングバック」が起こるため、寸法を出すのは容易ではありません。
量産を前提とした加工方法のため、「バリ」や「反り」の発生頻度は高く、薄板材をはじめ、高精度な要求には対応できないのが難点です。
ステンレスのレーザー加工
レーザー加工は、レーザー光によって素材を融解させる加工方法で、「バリ」や「反り」といった不具合を出すことなく切断や穴あけを行うことができます。
また、金型が不要のため少量であれば比較的安価で製作できるうえ、薄板材の加工にも対応可能です。
しかし、アルミニウムやステンレスなど反射率の高い素材は、加工時に照射されるレーザー光の反射によって加工機を破損してしまう恐れがあります。
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まとめ(加工事例など)
ステンレスは「錆びにくい」、「強度が高い」といった優れた特性を持つ一方で、その特性ゆえに加工が難しく難削材と呼ばれています。
そんな中、注目が集まっているのが薄板材であっても高精度な加工が可能な「エッチング加工」です。エッチング加工はプレス加工などと比較しても導入費用が安く、特に試作〜中量生産において非常に大きなコストメリットを持っています。
メルテックでは、ステンレスのエッチング加工において数多くの実績があり、微細形状・高精度の精密部品を提供しています。下記「ステンレス 精密部品の加工事例」内の加工材の厚みや開口幅、エッチング加工技術のメリットをご参照下さい。
ステンレス 精密部品の加工事例
フィルター
t=0.1mm
開口幅 0.154mm
プレス加工では困難な開口幅の多孔加工もエッチングなら加工可能です。
応力による変形も起こりません。
板ばね
t=0.08mm
外形 φ20mm
プレス加工では抜きにくい、小さいばねの高精度加工が可能です。
バリや歪みも発生しません。
エンコーダ用ディスク
t=0.05mm
開口スリット幅 0.08mm
フォトエッチングではパターンの再現性が高く、高精度のピッチ寸法が可能です。
複合加工として樹脂・金属のハブ等がつけられます。
お客様の課題解決に向けた試作や量産に対して、メルテックは積極的に挑戦しています。
- 「エッチングが適した加工方法なのか?」
- 「求める精度がエッチングなら実現可能なのか?」
- 「そもそもエッチングで加工できる材質なのか?」
などお客様の疑問に1つ1つお答えし、最適な加工仕様の提案をすることもできます。
ステンレスのエッチング加工はぜひメルテックにご相談ください。
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