1. 概要
モリブデンは高温に耐えられるだけでなく、腐食や摩耗にも強い金属で、多くの分野で活用されています。
例えば、航空機やロケットの部品や、電子工業や化学工業で必要とされる機器や器具などに適しています。
一方で、モリブデンは硬度が高くて加工しにくいという欠点もあります。
モリブデン薄板の加工方法は様々あります。その中でもエッチング加工は、高精度で複雑な形状を作ることができるメリットがあります。このコラムでは、モリブデンの特徴や種類、加工方法について解説し、エッチング加工のメリットや事例も紹介していきます。
2. モリブデンの特徴
モリブデンとは、銀白色の金属で、原子番号42、元素記号はMoと表されます。
モリブデンは、自然界にはほとんど純粋な形で存在せず、主にモリブデン鉱石として採掘され、精錬や還元などの工程を経て、モリブデン金属になります。
モリブデンは、高温に強く、耐食性や耐摩耗性に優れ、多くの分野で活用されている金属です。
モリブデンは、以下のような特徴を持っています。
高温に強い
モリブデンは、融点が2620℃と非常に高く、超高温環境で使用できる「高融点金属」に分類されます。そのため、高温環境で使用される部品や装置に適しています。
耐食性
モリブデンは、空気中では酸化しにくく、酸やアルカリなどの腐食性液体にも強いです。
高強度
モリブデンは高い引張強度と硬度を持ち、摩耗や変形に耐えることができます。また、他の金属に添加することで、合金の強度や耐食性を向上させることができます。
高導電性
モリブデンは銅やアルミニウムよりも高い導電性を持ちます。そのため、電気回路や電極などに使用されます。
低熱膨張率
モリブデンは温度変化による膨張や収縮が少なく、寸法安定性が高いです。そのため、精密機器や半導体製造装置などに使用されます。
合金の添加元素として重要
モリブデンは、他の金属と合わせることで、その特性を向上させることができます。例えば、鋼にモリブデンを添加すると、強度や耐熱性が高まります。ステンレス鋼にモリブデンを添加すると、耐食性や溶接性が向上します。
3. モリブデンの種類
モリブデンは、純度や合金成分などによってさまざまな種類があります。代表的なものを以下に紹介します。
純モリブデン
純度99.9%以上の高純度モリブデンです。高温や摩耗に強く、電気伝導性や熱伝導性にも優れています。純モリブデンは、板や棒などの形状に加工され、電子部品や炉内部品などに用いられます。
モリブデン合金
他の金属と合わせて作られた合金です。鉄や銅などに添加することで、合金の強度や耐食性を向上させます。航空機や自動車などの部品や装置に使用されます。
モリブデン化合物
酸素や硫黄などと化合した化合物です。触媒や潤滑剤などに使用されます。
4. モリブデンの加工方法
モリブデンは、高温に強く、耐食性や耐摩耗性にも優れた金属です。
しかし、硬度が高くてもろいという性質もあるので、部品加工には注意が必要です。
一般的な加工方法を紹介しますが、それぞれの特徴と注意点を理解しておくことが重要です。
エッチング加工
エッチング液(薬品)を用いてモリブデン薄板を腐食·溶解加工させ、任意の形状を作製する方法で、高精度で微細な形状の加工ができます。
工具の摩耗や熱変形の問題がなく、モリブデンの表面にストレスもかからないため、「バリ」や「反り」が発生しないうえに、モリブデンの特性を損なわずに加工できます。
切削加工
切削加工とは、旋盤やフライス盤などの機械で金属を削って形を作る方法です。モリブデンは硬いため、切削する際には切削するときは低送り量で高速度で動かす必要があります。また、刃物の材質や形状にも気を付ける必要があります。一般的には、超硬合金やダイヤモンドなどの高硬度の刃物が適しています。
プレス加工
プレス加工とは、金属板に圧力をかけて形を変える方法です。モリブデンは脆いため、プレスする際には亀裂や破断が起きないように注意が必要です。また、プレスする前には金属板を加熱して柔らかくする必要があります。一般的には、1000℃以上でアニール処理を行います。
レーザー加工
レーザー加工とは、レーザー光を金属に照射して溶かして切断する方法です。モリブデンは高温に強いため、レーザー光の出力や速度に注意しなければなりません。また、レーザー光が反射して周囲に影響を与えないように保護装置や遮蔽材を用意する必要があります。
その他
モリブデンを使用した部品の加工方法としては、他にも溶接や電気放電加工などがあります。溶接はモリブデン同士や他の金属と接合する方法で、アーク溶接やTIG溶接などが用いられます。電気放電加工は電極とモリブデンの間に電圧をかけて放電させて切断する方法で、高精度で微細な形状も作れます。
5. モリブデン薄板のエッチング加工
モリブデンは、高温に強く、耐食性や耐摩耗性が優れているという特性を持つ金属です。
しかし、硬度が高くてもろいという性質もあるので、部品加工には注意が必要です。
切削やプレス加工では、モリブデンの硬さや熱伝導率の低さにより、工具の摩耗や熱変形が起こりやすくなります。また、切削やプレス加工では、モリブデンの表面にストレスがかかり、ひび割れや脆化の原因となる可能性があります。
エッチング加工では、精密写真技術により素材にパターンを転写し、薬品によって腐食·溶解加工させて任意の形状を作り出します。このプロセスにより高精度で微細な形状の加工が実現できます。工具の摩耗や熱変形の問題はなく、モリブデンの表面にストレスもかかりません。「バリ」や「反り」も発生せず、モリブデンの特性を損なわずに加工できます。
モリブデン薄板のエッチング加工について、3つのメリットを以下にまとめます。
高精度
エッチング加工では、精密写真技術の活用と薬品による腐食・溶解加工により、高精度で微細な形状の加工が実現できます。モリブデンの表面にストレスがかからないため「バリ」「反り」が発生しません。
高速
エッチング加工では、薬品によって一度に多数の部品を加工できるため、生産効率が高くなります。
低コスト
イニシャルとしてエッチング原版の作製が必要ですが、プレス加工などの高価な治具は不要です。また、切削やプレス加工と比較して刃を傷めないため、工具の交換やメンテナンスのコストが削減されます。
6. エッチング加工事例
メルテックではモリブデン薄板の「エッチング加工」において多くの実績があり、ご要望に合わせて微細形状·高精度の精密部品を作製しています。
ご検討の際は下記の加工例や、精度表(厚み·寸法公差)をご参照下さい。
また、モリブデン薄板加工に関するご質問やご相談がございましたら、お気軽にメルテックまでお問い合わせ下さい。
モリブデン(Mo)エッチング例
板厚と寸法公差 (単位: mm)
板厚(t) | 0.01 | 0.02 | 0.05 | 0.10 |
---|---|---|---|---|
寸法公差 | ±0.004 | ±0.007 | ±0.010 | ±0.015 |
上記以外の板厚や寸法精度をご希望の場合は、弊社営業までご相談ください
TEL:04-7178-8800 E-mail:info@e-meltec.jp
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